生命保険相談のこんな進化
日本損害保険協会の会員会社以外にも、二〇〇九年現在、一般社団法人外国損害保険協会の会員会社二〇社と准会員会社五社が日本で営業しており、元受保険、再保険、船主責任保険を引き受けています。
かつて損害保険業界では、東京海上火災保険、安田火災海上保険、大正海上火災保険(一九九一年に三井海上火災保険に社名変更)、住友海上火災保険、日本火災海上保険の五社が、大手五社と呼ばれていましたが、一九九〇年代以降、損害保険業界の再編成が急速に進み、業界損害保険会社の資金量・資金力は、生命保険会社のそれと比べるとき、格段に見劣りがします。
しかし、損害保険の普及によって、損害保険会社にも巨額の資金が集積することになり、生命保険会社同様、損害保険会社も、保険料として徴収し保有する保険資金を、安全性を第一に、流動性、公共性にも配慮しつつ収益性を追求する、という資産運用原則のもとに、国民経済のみならず、国際経済のさまざまな分野で投資運用しています。
それでも、かつては、生命保険資金が長期性を有しているのに対し、損害保険資金は短期的な性格の資金であったため、生命保険会社と損害保険会社とでは、資金の投資運用のあり方に大きな違いが見られました。
近年、生命保険会社の資産構成における貸付金の比重は二〇パーセント台に落ち込んでいますが、一九六〇-一九七〇年代には六〇パーセントを上回っていました。
これに対して、損害保険会社の資産構成における貸付金の割合は、絶対的に低水準にとどまっていました。
これは生命保険と損害保険の基本的な性格の違いからきています。
概して生命保険が長期保険としての性格を有しているのに対し、損害保険は短期保険としての性格を有しています。
また、保険事故発生の確率が、生命保険では大きく変動しないのに対し、損害保険ではときに大きく変動したり、一回の事故で巨額の損害が発生する可能性があったりします。
こうしたことから、資産運用において、損害保険では生命保険以上に流動性・換金性が重視されます。
しかしながら、長期的な不況と低金利が続く近年は、生命保険資金と損害保険資金の投資運用状況に、あまり大きな差が見られなくなりました(表2-7、表2-8、表3-7参照)。
損害保険業界にとって、バブル経済崩壊の影響は、生命保険市場ほどではないにしても、損害保険市場の成熟化もあって甚大でした。
一九八九年以後、船舶保険を除く主要な保険種目の収入保険料の増収率が、ほとんど減少または停滞し、一時、元受収入保険料の約四〇パーセントを占めていた積立型の長期保険の収入保険料の割合も、一九九二年には約三〇パーセントにまで低下しました。
しかも一九九一年の台風一九号では、一つの災害による一国の支払い保険金額としては世界最大級の約五七〇〇億円を支払いました。
長年にわたって赤字を計上している国際再保険取引においても、ヨーロッパ、アメリカを襲った暴風雨など、多発した巨大自然災害に対する支払い再保険金が増大し、事業損益が連続して赤字になりました。
またバブル経済崩壊後、資金運用環境が悪化する中で、四〇〇〇億円前後の黒字で推移していた事業外損益についても、黒字が一九九二年には三二〇〇億円を、さらに一九九三年には二〇〇〇億円を切るまでに減少し、当期利益は、不良債権の償却もあって、一九九五年度まで七年間連続して減益となりました。
ちなみにバブル絶頂期の一九八九年度には、損害保険全社の総資産は、前年比一五・〇パーセント増の二三兆七七〇〇億円になっているのに対し、一九九五年度末の総資産は、前年比三・五パーセント増の二九兆四五〇〇億円にとどまりました(表37参照)。
しかも当時の損害保険大手五社、東京海上火災保険、安田火災海上保険、三井海上火災保険、住友海上火災保険、日本火災海上保険の同年度の正味収入保険料は、一九五〇年代後半以降でもつとも低い伸びになり、公表不良債権(破綻先債権、延滞債権、金利減免債権の合計額)は約一六五八億円に達しました。
その後も、正味収入保険料は一進一退を続ける形で推移しています(表3-8参照)。
損害保険業界にとってのバブル経済崩壊の影響は、生命保険業界と比較し、相対的に少なかったものの、一九九〇年代後半に加速した規制緩和・自由化による競争の激化を背景にして、損害保険会社の合併・統合が進む一方で、経営が破綻する損害保険会社も出てきました(表319参照)。
経営が破綻したのは、第一同年、大成火災海上保険は損害保険ジャパンと合併しました。
合併に際し、スポンサー会社である損害保険ジャパンに対しては、損害保険契約者保護機構から資金援助が行われました。
日本国内で損害保険事業を営む免許を受けたすべての会社が、一九九八年に設立された損害保険契約者保護機構への加入を義務付けられており、同機構に対して負担金を事前に拠出します。
損害保険契約者保護機構による損害保険会社の破綻処理の方法は、究極的に保険契約者に対する保険金等の支払いを確保することを目的にしていて、破綻した損害保険会社の保険契約者に対しては、保険種目ごとに一定の補償が行われます(表3題10参照)。
畑新たな動向長期にわたる不況は、生命保険業界同様、損害保険業界にも深刻な影響を及ぼしています。
たとえば、損害保険市場におけ123る主力商品としての自動車保険の正味収入保険料の伸びは、景気の動向にも影響されるとはいえ、一九八〇年代後半から一九九〇年代前半にかけての一〇パーセント前後の伸び率からは予想もできなかった低水準にここ数年は落ち込み、年によっては前年比減にさえなっています。
しかも、その一方で外資系損害保険会社・外国損害保険会社が、商品開発、保険料率、契約募集方法、などにおいて積極的に新機軸を打ち出すなど攻勢を仕掛けており、損害保険業界における競争は一段と激化してきています。
こうした状況のもとで、日本の損アダム・スミスの保険論経済学の始祖アダム・スミスは,『国富論』(1776年)の中で当時の民営保険事業や年金による政府の資金調達などについて論及しています。
火災保険と海上保険については、次のように述べています。
「保険業でいくらかの金儲けをした人は多数いるが,それで大きい財産をこしらえた人は非常に少ない。
……保険業は,個人財産の安全性をおおいに高め,一個人なら破滅してしまうような損失を,おおぜいのあいだに分散することによって,社会全体にかかる時には,軽くて楽なものにしてしまう。
けれども,この安全性を保障するためには,保険業者はよほど大きな資本をもつ必要がある」。
ここで展開されているスミスの保険理論は損害分担説とでも呼ぶべきもので,当時の海上保険や火災保険の機能を的確に把握していますが.産業革命勃興期の損害保険事業には.あまり旨味はなかったようです。
害保険会社は、合併・統合による経営基盤の強化と経営規模の拡大を挺子にして競争力の強化を図っていますが、いまだ顕著な効果を挙げるにいたっていません。
むしろ合併・統合に伴う調整にてこずり、合併・統合の所期の日的からは程遠い状態にある、とさえいえそうです。
損害保険会社が競争力を強化していくためには、不況が続く少子高齢化時代の消費者・企業のニーズに対応した魅力ある新商品の開発、経営の効率化による保険料の引き下げ、各種の情報提供を含む保険関連サービスの充実などに、絶えず努める必要がありそうです。
損害保険業界は、近未来における発生が現実味を帯びてきた大地震など、巨大リスク・異常リスクを対象にした保険種目を抱えています。
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